放送エンジニアの備忘録

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最近、ヒップホップが流行ってる理由はラウドネスのせいな気がしている話。

こんにちは。音数詰め込みまくった音圧バキバキのラウドミュージック聴いてるやつなんてまだいるの?僕は大好きです。

 

その趣向に反して最近、ヒップホップがめちゃくちゃ流行っています。欧米ではSpotifyのチャートとか見るとあからさまにヒップホップがどちゃくそ流行っている。数年前までのラウドミュージックの流行りがなかったかのように…

 

邦楽だとKing Gnuのこの曲とかマジでヒップホップ。ラップはしてないけど、ビートはかなりヒップホップ。邦楽は欧米の流行りが数年遅れでもろにくるので、このヒップホップうぇーいな流れは加速されると思っています。

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ただ、僕の感性が時代に取り残されてしまっているせいか、この風潮は全然理解できませんでした。そこでちゃんと理由を考えてみようかなぁ…と。紛いなりにも音響エンジニア的な仕事をしているので、エンジニアの側面から考えてみました。

 

結論から言うと、「ラウドネスがキーになっている」のではないかという説が濃厚。ラウドネスについては話が冗長になるからググってくれ。ざっくりいうと曲のうるささ。

 

音圧戦争というのを聴いたことがないでしょうか?2009年くらいのPerfumeの音源なんかが顕著ですが、オーディオ波形が”海苔波形”と呼ばれるバキバキにマキシマイズされた音源がCD音源の時代には流行りました。ダイナミクスがほぼほぼない状態です。それが流行った理由は、海苔波形にすると他の音源と聞き比べたときに大きく聞こえるからです。大きく聞こえると何が良いかというと、人間の耳は良い加減なので、「大きく聞こえる音is正義」ということで、海苔波形の音源を聴くと音が良いと錯覚してしまうんです。 

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音圧戦争におけるマキシマイズのイメージ

上図は音圧を上げた状態のイメージです。

※キャラクターの大小が音量の大小を表しています。

要は、ピーク(最大音量)に対して可能な限り小さい音も大きくして、全体の音量をあげようぜって話です。先ほどラウドネスという話が出ましたが、この状態は音圧が高い(≒ラウドネス値が高い)ということになります。画像はイメージなのでドラム・ベース・ギターしかいませんが、シンセなどで音数を増やして隙間を埋めていくとさらにラウドネス値が上がり音圧があがります。

 

例えば、こういう楽曲とかラウドネス高め。

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CD時代はラウドネスを上げれば、音が大きく聞こえる。それで良かったんです。

 

ただ、ストリーミングサービスが流行り状況は一変しました。

 

ストリーミングサービスが流行っている現在、ラウドネス値が大きい楽曲がリスナーに聴かれるときに小さく聴こえてしまうという現象が起きています。それは、ストリーミングサービスでは自動音量補正というものがあり、ラウドネス値が規定の値を超えている楽曲の音量を下げるシステムになっているからです。規定にひっかると勝手に音量を下げられてしまうのです。

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自動音量補正のイメージ

 

つまり、Apple MusicやSpotifyなどのストリーミングサービスでは、”音数を絞ったサウンド”にすることで、ラウドネス値が小さい楽曲の方が大きく聞こえるという、音圧戦争時代の逆転現象が起きています。

※もちろん、単にラウドネス値が小さい楽曲は小さく聞こえるので、自動音量補正で下げられない中でラウドネス値が高い楽曲が最も大きく聞こえます。ただ規定値は公表されていないのが現状…

 

Taylor SwiftのLook What Made Me Doが流行った理由は当時マジで理解不能でしたが、ようやく腑に落ちました。久しぶりに聴いたけど音数少なすぎてわらう。

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そういう背景があって、音数の少ないヒップホップが流行っているのかなぁと思います。